第252章

島宮奈々未が警察署に駆けつけたときには、すでに夜明け前だった。

 一歩遅かった。天瀬姫奈が先に天瀬震の遺体を引き取っていたのだ。

 警察が彼女に渡したのは、天瀬震の遺書一通だけ。

『奈々、父さんは母さんのところへ行く。この世にはもう、うんざりだ!』

 島宮奈々未はその一文を何度も読み返した。鼻の奥がつんと痛んで、ぽた、と落ちた涙が遺書を滲ませる。

「……嘘つき」

 怒りが込み上げる。信じられない。昼間まで自分と言葉を交わしていた人間が、数時間後にはもういないなんて。

 まだ罪だって確定していないのに。どうして、罪を恐れて自ら命を絶つ?

 遺書を握りしめたまま、島宮奈々未は冷え...

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